詐欺組織「クロックス・インク」のグローバル展開
私が初めて詐欺に手を染めたのは子供の頃のことです。確か8歳くらいだったと思います。学校で宿題として何かを読んで、親の署名をもってくるように言われました。私は何故かそれを怠ってしまい、学校の先生に叱られないように、母親の署名を偽造することにしました。学校は気づきませんでしたが、母親は気づいてしまい、私を叱る代わりに、子供のころの些細な悪行でも、大人になったら大きな問題に発展する可能性があることを、私に厳しく教え込んだのです。 当時、私はまだ気づいていませんでしたが、将来は金融犯罪に関わる仕事に就くことになるなんて想像もしていませんでした。簡単に言えば、倒産とは企業が破綻する状態のことです。企業が破綻し始めると、経営陣は会社のお金を横領しようと画策し始めます。私が初めて担当した調査案件は、9月に亡くなった人が、10月と11月にも給料を受け取っていたというものでした(11月の給与は翌年の1月にようやく換金されました)。上司に「死んだ人が給料をもらえるものですか?」と尋ねたのを覚えています。 これは、人がどんな不正行為を企むかを示すほんの一例に過ぎません。規模は小さかったし、調査依頼をしたのは亡くなった人の叔母だったので、問題はあっさり解決しました。 しかし、不正行為を企む人がいるのはこのケースだけではありません。詐欺、マネーロンダリング、その他の金融犯罪は、それ自体が一つの産業と言えるほど規模が大きく、詐欺師たちは私が倒産処理の仕事で最初に遭遇したような単純な人物ばかりではありません。詐欺師は一般的に賢く、不正行為が発覚しないようにあらゆる最新技術を駆使します。金融犯罪の現場を再現するだけでも時間がかかり、「被害財産の回収」は非常に手間のかかる作業です。シンガポールの「資産回収フレームワーク」の例をご覧ください。 詐欺師たちの特徴の一つは、柔軟な思考力です。世界中で人々がグローバリゼーションに反対する風潮が高まっている今、詐欺師たちは資金の国境を越えた流れを巧妙に利用して、不正行為を拡大させているのです。先日、シンガポール最大手の法律事務所の一つであるラジャ・タン法律事務所が主催したセミナーに参加した時のことを思い出しました。このセミナーは、アジアにおける国境を越えた資産回収をテーマとしていたのですが、そこで提示された事例は以下の通りです。 現代では、国境を越えて資金を移...